遺言書と相続放棄とは?家族を守るために知っておくべき基礎知識と実践ポイント

遺言について
広告

はじめに 遺言書と相続放棄とは何か

広告

相続とは、家族の誰かが亡くなったときに、その人の財産や借金を引き継ぐことです。財産には、自宅や預貯金、車、土地といった「プラスの財産」に加え、クレジットカードの未払い、住宅ローン、医療費の未払金などの「マイナスの財産」も含まれます。例えば、郊外の自宅と預金300万円がある一方で、200万円の借金が残っているケースのように、必ずしもプラスばかりとは限りません。

相続は突然訪れることが多く、事前準備が整わないまま始まってしまうと、財産の分け方や借金の扱い方で家族間に意見の食い違いが生じ、トラブルにつながることがあります。

このような問題を防ぐために役立つ制度が「遺言書」と「相続放棄」です。遺言書は、自分の死後に誰へどの財産を承継させるかを明確に示すものです。一方、相続放棄は、相続したくない相続人が家庭裁判所に申し立て、最初から相続人でなかったものとして扱ってもらう手続きです。これらの制度を理解しておくことで、家族が安心して相続に向き合えるようになります。


遺言書と相続放棄の役割 家族のトラブルを防ぐために重要

遺言書があると、亡くなった人の意思が明確に残され、誤解や対立を防ぐ大きな助けになります。「長男に家を継いでほしい」「妻に生活費として預金を残したい」といった考えが遺言書に示されていれば、相続人同士の話し合いもスムーズに進みます。

遺言書がない場合、法律で定められた割合で財産を分けることになります。しかし、その割合が家族の希望と一致するとは限らず、結果として争いにつながるケースも少なくありません。

一方の相続放棄は、相続人が「相続しない」という選択を取るための制度です。特に借金が多い場合や、被相続人と疎遠だった場合などに利用されます。相続放棄をすると、財産も借金も一切引き継がないため、負担を抱えずに済みます。


広告

遺言書にはどんな種類がある? 主な3つの方式をわかりやすく解説

遺言書には、主に次の3つの方式があります。

自筆証書遺言

全文を自分の手書きで作成する遺言書です。費用がかからず手軽に作成できますが、日付の欠落や押印漏れなど小さなミスで無効になる可能性があります。法務局の保管制度を利用すれば、紛失防止や検認不要といったメリットがあります。

公正証書遺言

公証役場で、公証人に作成してもらう方式です。形式の誤りがなく、もっとも法的に確実な遺言書とされています。原本は公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配がありませんが、作成には費用がかかり、証人の立会いが必要です。

秘密証書遺言

遺言内容を秘密にしたまま作成し、公証役場で存在のみを証明してもらう方式です。内容チェックが行われないため、形式不備による無効リスクがあります。また、自分で保管する必要があるため、紛失の可能性もあります。

これらの特徴から、実務では公正証書遺言がもっとも安心できる方式として推奨されています。


広告

相続放棄とは?どんなときに使うのか

相続放棄は、家庭裁判所に申し立てることで、最初から相続人ではなかったと扱ってもらえる制度です。借金の負担を避けたいときや、相続に関わることが精神的・経済的に難しい場合などに利用されます。

相続放棄のメリット

  • 借金や未払い金など、マイナスの財産を引き継がなくて済む

  • 相続トラブルに巻き込まれにくくなる

  • 相続人としての財産管理義務を負わずに済む

相続放棄のデメリット

  • 自宅や預金などプラスの財産も一切受け取れなくなる

  • 一度成立すると取り消しができない

  • 次順位の相続人へ影響が及ぶため、家族間での調整が必要になる

相続放棄は強力な制度ですが、メリットとデメリットを理解したうえで慎重に判断する必要があります。


広告

相続放棄の期限と注意点 3か月ルールを正しく理解する

相続放棄は、「相続開始を知った日から3か月以内」に申し立てる必要があります。この“知った日”がいつかは誤解されやすいため、具体例で確認しておくと安心です。

3か月のカウント開始例

  • 同居していた家族が亡くなり、その場で死亡を知った場合
    → 亡くなった日がスタート。

  • 遠方から訃報を聞いた場合
    → 訃報を受けた日からスタート。

  • 死亡は知っていたが借金の存在を後から知った場合
    → 借金を知った日は無関係。死亡を知った日からカウント。

  • 裁判所の通知で相続人だと知った場合
    → 通知を受けた日がスタート。

この3か月の期間を「熟慮期間」と言い、財産状況を調べて相続するか放棄するかを判断する大切な時間です。期限を過ぎると原則として相続したとみなされます。また、期間内でも財産を使うと単純承認と扱われ、放棄ができなくなるため注意が必要です。


広告

遺言書があっても相続放棄はできるのか?

遺言書で財産を指定されている場合でも、相続放棄は可能です。「長男にすべてを相続させる」と書かれていても、長男が放棄すれば次順位の相続人へ権利が移ります。

また、法定相続人ではない受遺者でも「遺贈の放棄」ができます。遺言の存在によって選択肢が奪われることはありません。


相続放棄が次の相続人に与える影響

相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとして扱われます。そのため相続権は次順位の親族へ移ります。子が放棄すると父母へ、父母も放棄すると兄弟姉妹へと移っていきます。

借金の相続を避けたい場合、次順位の相続人も順に放棄する必要があります。負担が親族に移らないよう、相続放棄をした人は速やかに家族へその事実を伝えることが大切です。


広告

遺言書と相続放棄を上手に活用するためのポイント

遺言書と相続放棄を正しく理解し活用することで、相続手続きをスムーズに進め、家族の安心につながります。

相談するタイミングの目安

  • 相続後、財産や借金の状況がよくわからないとき

  • 借金がある可能性があると感じたとき

  • 家族間で不安や意見のズレが出始めたとき

  • 遺言書の内容が複雑・不明瞭だと感じたとき

  • 相続放棄を検討したいが判断に自信がないとき

実務上のポイント

  • 早めに財産を整理し、必要に応じて遺言書を準備する

  • 借金の可能性がある場合は、できるだけ早く財産調査を行う

  • 相続放棄を希望する場合は、早い段階で専門家へ相談する

  • 家族同士で情報を共有して誤解を防ぐ

  • 相続が発生した際は、焦らずに手続きを確認する

 

広告